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読書:大人の女はどう働くか?

概要

先日有楽町の三省堂書店にふらりと入ったところ、平積みコーナーに置いてあった本のタイトルに目を引かれた。

大人の女はどう働くか? 絶対に知っておくべき考え方、ふるまい方、装い方 [ ルイス・P.フランケル ]
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原題:NICE GIRLS DON’T GET THE CORNER OFFICE, 101 Unconscious Mistakes Women Make That Sabotage Their Careers

従来「女性が社会で活躍するために」というような事を謳っている本はあまり好んで読んでいないのだが、森喜朗氏による女性蔑視発言も記憶に新しいところなので、興味を持った。

ジェンダー・ギャップ指数2020では日本の総合スコアは0.652、順位は153か国中121位(前回は149か国中110位)という事実からも日本国内における女性の地位向上をはかる振る舞いについて勉強する事には意義がある。

2004年に刊行されたNICE GIRLS DON’T GET THE CORNER OFFICE(邦訳『小さなことから自分を変える7つの仕事術』日本経済新聞社、2005年)を新たに翻訳したものであるという。

この記事を書いているのが2021年3月なので、原作は約17年前に刊行されたことになる。

仕事の場では、「かわいい」女ではなく、「大人の」女であるべきです。

でも多くの女性は大人の女の働き方っとはどういう物かを正しく理解していません。

この本は、私の25年にわたるコーチング経験がもとになっています。

これを読めば、あなたもきっとより洗練された働き方が身に付くはずです。

本のカバーそでに記載

とあるので、1980年代から2000年代前半にかけてのコーチング経験を元にして上梓された本ということになる。

参考になった点

冒頭に「はじめに ”女の子”は卒業しよう」という文章がある。この文章の中にある1節に女性が男性と対等に意見を言おうとしたときに感じる心理的ハードルの根幹が凝縮されているように感じた。

原因のひとつは社会通念にあります。女性は幼いときから、「幸せと成功を手に入れるために、礼儀正しく、口調は優しく、従順で、他人の気持ちを優先するようでありなさい」と求められます。もし、それに反する言動を撮ろうとするッと、嘲られ、非難され、誰にも認めてもらえない。つまり女性は、大人の女にふさわしい態度をとるよりも、”従順な女の子”でいるほうが楽なのです。成長してからもなお、しばしば女の子のようにふるまうのはそのためです。

P.6

約20年前のアメリカで生活をしていた女性たちに関する記述であるが、2021年現在の日本において生活している女性にも当てはまる点が多くあるのではないだろうか。仕事上では成果を出すほかないが、その他のコミュニケーションにおいては”従順な女の子”である人の方がウケが良いのは間違いないと感じる。その方が話しやすいという男性が多く存在している事は、少なくとも私の周囲に関していえば紛れもない事実であると感じている。

現在の日本において「アメリカ人女性は主張が強いが、日本人女性はもともとそこまで自己主張をするタイプではない」と思っている人にとって、上記の文章は都合が悪いように思う。少なくとも20年前にはアメリカで働いている多くの女性が社会通念に基づいた”女らしさ”の呪縛の中でもがいていたという事だ。アメリカに住んでいるから、日本に住んでいるから、というのは環境の差異はあれど、どちらの社会であっても社会通念上で求められてきた”女らしさ”の呪縛の本質にい大きな差はないようにとらえる事ができる。

この本は初めに大人の女としての振る舞いができているかどうかの自己評価を行い、その自己評価結果が低かった点についての章を読み、自分の言動をどのように変化させていくべきかを認識するという構成になっている。各章におけるテーマは以下のとおり。

  1. 自分を知るテスト
  2. 試合の進め方
  3. 行動のしかた
  4. 正しい考え方
  5. 自分の売りこみ方
  6. 知的な話し方
  7. 自分の見せ方
  8. 対応のしかた

全編通して読んでみた。参考にできそうな部分を2-3個から実践していくのが良い使い方かと思うが、読み物としても面白い。それぞれの章において提示される実例は日本の会社においても「あるある」な状況もあれば、日本の会社においてはあまり遭遇しないようなシチュエーションもある。

今後考えたい事

日本の社会において、ジェンダーギャップを小さくしてくことを考える時、今後あるべき「大人の女性」とはどのような女性なのだろうというのは考えたい。それと共に、あるべき「大人の男性」も。

なんとなくの感覚であるが「女の子」の次にくるのが若干の卑下を含んだ「おばさん」という存在になるように思っている。「大人の女性」という概念自体が日本社会の中で希薄であるような印象を持っている。それは男性においても類似した感覚はあり、「青年」の次が「おっさん・おじさん」またはちょっとオシャレをきどった「ちょい悪オヤジ」と表現されるくらいである。「大人の男性」はどこにいるのだろう。

生まれ育った時から慣れ親しんでいる文化の中にある、ジェンダーギャップにつながるバイアスを理解し、取り除いたり薄めたりしていく事は時に自己を否定する・されるような感覚が生じて、反発したくなる。しかし、考えて実践していくことでしか現実は変わらない。

ジェンダー、ジェンダーギャップ、ダイバーシティ&インクルージョンについては勉強し、知見を広げ、自分なりの意見を持ち、人と意見交換をする場を恐れないで生きていきたいと思う。